今どき訪問販売は「売れる」のか

セキュリティや安心、安全に対してこれだけセンシティブな世の中で、依然としてなくならない「訪問販売」。そのような営業方法で、相手は儲かっているものなのでしょうか。

実際に、訪問販売という手段から脱却し、新しい営業方法を確立することができている事業者もたくさん存在します。それは自社の持つ「営業力」が、時流に乗ることができなかったということを認めたケースです。何人の営業マンを投入しても、どれだけトークを工夫したとしても、何も売れなくなってしまった場合、そのまま座して倒産を待つか、新しい方法で商売を展開するかのどちらかということになります。

その際、戦々恐々とするのは実際に営業活動についていた人たちです。会社がなくなるということは、自分の仕事がなくなるということ、会社がなくならなくても、その営業手法がなくなるということは、それも自分の仕事がなくなるということです。「モノを売ってナンボ」、「営業してナンボ」であった訪問販売員たちは、それで成果を出していた人であればあるほど、他にできることがなかったり、他の仕事を知らなかったりするものです。会社の方針とはいえ、突然仕事がなくなったり変わったりすることに、戸惑いを覚えない人はいません。

実際に、そのようにして訪問販売から撤退して、それまで訪問販売に従事していた人材を別のところに回し、方針を転換して再スタートした会社はたくさんあります。それでも、その会社が訪問販売を行っていた時代よりも儲けているという例はあまり聞きません。それは、「無理矢理トークで押し切っていた」事業だったからであり、ただ待っているだけではそのトークを発揮する商談の機会が激減するからです。

時代は「自分でそのモノの価値を判断する」ということが当たり前になっている世界です。ですから、それまで訪問販売だけで展開していた事業者も「インターネット」の活用は当然のように考えるでしょう。インターネットで獲得した問い合わせに対して「トーク」をしかけ、訪問販売していた頃と同じように押し切れば良いと、考えるものでしょう。

ですが、そのような思惑通りにはいかないもので、インターネットでの問い合わせを獲得するためにも一定の方法論が必要ですし、そうでなくても現代は「比較」されることが当たり前の時代です。「しつこく勧誘される」ということ自体が、あまりない時代に、強烈なトークで相手にアプローチするのは違和感しかないのです。

今どきの訪問販売は、そのような理由から「自転車操業」であるケースが多いです。そのような事業者は都市部から地方に拠点を移したり、そもそも事業自体を転換したりしているところでしょう。ただ、地域によってはそれが「主力」であることもまだあるようです。インターネット通販に馴染みの無い世代に対して、そのような手法はまだ有効であるからです。ですが、時代が「デジタルネイティブ世代」だけに変わったとき、訪問販売は完全に廃れるでしょう。

↑ PAGE TOP