戸別訪問という営業手法とは

戸別に訪問するということは、直接消費者になり得る人の自宅に押しかけるということです。それは現在では総じて「怪しい」とされる営業手法です。

そのような営業を受けた経験のある人であればおわかりかと思いますが、そのような営業ではなんの前触れもなく突然インターホンが鳴るものです。そして出てみると「知らない人」が表に立っていて、おもむろに販売したい商品の紹介を始めるというものです。

現在でも、もしかするとあるかもしれないのですが、「新聞勧誘」が代表的なものではないでしょうか。新聞勧誘は長く「訪問」によって成約するというケースが成立していた商材です。このタイプの商材では受け手側も「あ、新聞の勧誘か」とすぐにわかるものですから、「不信」というよりも「いるかいらないか」ということがハッキリとその場で判断できていたものでした。

ただ、そのような新聞勧誘のなかでも「上手な人」というのはいるもので、最初は「いらないダンボールを集めに来た」などといい、訪問先の人と仲良くなった上で「実は新聞をとって欲しい。嘘でもいい、すぐに解約してもいい」などといってサッと契約をとってしまっていたものでした。そのような際、そのような勧誘で契約をしてしまった人も、「仲良くなっている」ため、自分が「うまいように騙されたのではないか」などとはすぐには思い至らないものでした。「すぐに解約できると言っていたし、なんだかオマケまでもらった」ので、不思議と「納得」してしまっていたのです。

実は「そのような状態」に持っていくことこそが訪問販売に関わる人の手口です。人は仲良くなった相手に勧められたものに対して好意を抱いて受け止めることが出来るのです。自分が買ったものに対しては、納得感を自分で抱きたいものですし、そのような納得感はただ自分だけのものであり、誰かに「騙されている」と指摘されてもにわかには信じないものなのです。

戸別訪問という手法では、そのようにマンツーマンで顧客と接することができるものです。それは相手の顔色を伺いながら、相手がどのような人であるのかを探りながら、自分のペースに相手を巻き込むことができる手法です。そのような「営業マンのペース」を再現するためのクロージングトークであり、そのような状態を作りやすいのが、「訪問」という手法なのです。そこには必ず「トーク」があるもので、そのトークに「乗せられやすい人」というものを、営業マンは本能で知っているのです。

戸別訪問による販売が、難しくなってきたのは「オートロック」などのマンションが増えたからでもあるのですが、実はそれだけではありません。訪問販売という手法自体が「胡散臭いもの」として扱われる世間的な風潮が広がったからでもあります。

「訪問販売」は、個人のスキルで成り立っている営業方法でもあり、営業マンには得てして「ノルマ」という責任が発生します。多くの人はそのような仕事を「辛いもの」として捉えるため、現代でもとても少なくなってきた営業手法といえるでしょう。

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