訪問販売に狙われる時間

訪問販売の基本は顧客になり得る人のところに出向くことです。それがマンションでも、戸建て住宅でも、基本行動は変わりません。訪ねた先に人がいなければ意味がありません。

ですから、自然と訪問販売が活発になる時間と、そうではない時間が出てくるものです。日中であれば、ほとんどの家庭では「主婦」しかいないということになります。幼子を抱えていても、そうでなくても、平日の昼間に自宅にいる人は「家事」をしていることが大半です。営業マンは、できるだけトークを有利に進めようと考えているものです。訪問先で少しでも効率的なアプローチを行うためには、主婦が「ハナシを聞いてくれる時間」を狙った方がいいに決まっています。ですから、主に家事が一段落する時間が、訪問販売員に狙われる時間ということになります。

間違っても早朝や深夜であれば、そのような時間に訪問などしてしまえば成約どころかクレームになってしまうことは必至です。朝はなにかとバタバタして忙しく、拠るは一日の疲れを癒す時間だからです。ですから、訪問販売はまず日中がすべてです。しかも、朝のバタバタが一段落し、できればひと通り洗濯もし終わり、それを干し、簡単な家の掃除も済ませた段階を狙うものです。

具体的な時間で表せば、それは朝の10時から12時までの間となります。12時付近は昼食のことを考える時間ですから、10時から早いうちの時間帯が、営業マンにとってはゴールデンタイムということになるでしょう。その時間にできるかぎり「ハナシを聞いてくれる」訪問先に訪ねたいのです。

それは商材によっても違うでしょう。たとえば子ども向けの教材や英会話などのサービスであれば、明らかに「子どもがいる家」でなければ意味がありません。子どもがいる家は、独特のサインを出しています。子ども用の遊具が表にある、子ども用の自転車が見えているなどです。他の商材でも同じです。高級化粧品を売り込みたいのであれば、「高級」とされている住宅地を狙います。その中でも、小さな子どもがいそうな家庭は避けるものです。なぜならば、「子ども」にはなにかとお金がかかるものだからです。子どもがいたとしてもある程度育っているだとか、経済的にゆとりのある世帯を狙うものです。

そのような営業マンの嗅覚は、「時間」に対しても敏感に働きます。決して主婦が「暇」であるというわけではなく、こちらのハナシを聞く「余地がある」時間というものを、経験で知っているからです。そのようにして、訪問販売の営業マンは巧みに自分の都合の良い訪問先を探しているということになるのです。たとえそこで文句を言われたとしても、めげるわけにはいきません。なぜならば、それが「仕事」だからです。そして、それらの訪問しやすい時間帯も、先人たちが築き上げた経験則なのです。

こう考えると、訪問販売というものは、それ自体が一種の職人技のように感じられます。如何にして自然に物品を販売するのか、それがテーマの職人です。

↑ PAGE TOP